知的障害者の大学進学

 2008年に高等教育法が改正され、知的障害のある生徒の大学進学を促進することになった。とはいっても小学校過程の読み書き計算でさえ難儀するのが「知的」障害なのだからどうやって大学の授業などわかるのか、と思う人は多いだろう。事実、私の勤めるヒロのコミュニティカレッジ内でも議論噴出中で、どうやってどのクラスを履修させてどうサポートするのか、など難問が山積みである。英作文や数学など重点学科の教官などは大学レベルの内容をどう「知的」障害者に教えるのか、そもそも教えるに値するのか、などで頭を悩ませている。
 しかし、このような狭い視野で議論を続けていても結論は出ないことはすでに証明されている。イリノイ州のコミュニティカレッジでは、学科中心の授業を履修させるだけでは知的障害者が大学生としては成功できないことを悟り、創意工夫のあるキャンパスプログラムを5年ほど前から始めている。それによると、学科だけを履修することではなく、いかに普通大学のキャンパスで普通の学生に混じって普通の大学生活をエンジョイするか、に知的障害者の大学進学の意義があることに注目している。いわばメインストリーミング、インテグレーションの思想だ。そして、上記の高等教育改正法の中で規定されている「知的障害者の大学進学ための包括的高等教育プログラム」☆☆を利用し、「キャンパスにいる時間の半分以上を一般学生と共に活動し」さえすれば普通学生と同様に、奨学金や授業料援助などが受けられることを盛んに宣伝して知的障害者の入学率アップに貢献している。


義理の姉がカリフォルニアから遊びに来たのでコナ一緒に行って来た。目の前がこういう景色のコンドミニアムに宿泊。水平線には今にも沈む太陽。壁の上にはワイングラス。ああ極楽...

 イリノイ州ルイス・クラーク・カレッジやハーパー・カレッジ、ウィスコンシン州のエッジウッド・カレッジなどはその先陣を切って、今では10―20人の知的障害学生が学ぶだけでなく、キャンパスジョブ(大学構内でできるアルバイト)をしたり、や芸術・体育などのクラスを中心にメインストリーム「活動」をすることによって大学生活を謳歌している。その成功の裏には、学生や家族の強い大学進学への意思だけでなく、学科長・学部長・学長など管理層レベルの強いサポートがあったことは特筆すべきだ。
 学科の勉強だけではなく、大学生活全般に視野を広げて考える必要性のあることをこれらの成功例は物語っている。それに、様々なレベルや立場の人とのネットワーキング力、サポートスタッフが法律などを完全に理解して正しく活用する能力のあること。やはり立派な法だけがあっても実際はなにも始まらない。

☆ Higher Education Opportunity Act of 2008
☆☆ Comprehensive Transition and Postsecondary Program