サポートの東西アプローチ

 新学期が始まり早や二週間。新しく始まった学生サポートプログラムが2つある。一つは私の勤めるコクア・ラボが最新テクノロジー・ラボに新生したことだ。夏までは障害学生サービスセンターに登録した学生なら誰でも利用できた。宿題をしたり、奨学金・助成金の申請をしたり、情報を集めたり、余り周りに人がいなければスタッフと話しこんだり、と比較的何をしてもいい多目的ラボだった。それが今秋からカーズワイルとドラゴン・ナチュラリー・スピーキング☆☆という2つの最新テクノロジー・ソフトウェアを使う学生のみ利用できるラボに変わった。ラボの見た目も、一人ひとりがプライバシーを保てる半コンパートメントブースが並び、以前の集団大部屋状態から個人利用への変化が明らかである。
ハワイではなぜか赤くなってしまうシソ。右の鉢はビーツ。奥は野放しのねぎ坊主

 このため私たちラボのスタッフは、以前からラボを利用している学生に対してこの2つのテクノロジー以外の目的でラボを使うことはできなくなったことをいわなければならなくなった。これは「最新テクノロジー以外の利用者はほかのコンピューターラボへ行って」ということで、旧ラボに親しんだ学生たちには青天の霹靂。学生たちの評判も悪く、「ほかのラボじゃいいヘルプが受けられないのに」、「ここのほうが便利だったんだけど」とか、果ては「障害学生を差別しているのか!」と憤る人まで出る始末。ラボの利用目的変換は学生部長の指示だから仕方がないにしても、これまでのラボが雑然とした感じで何のために来てもよかったのに対して、今のラボはきちんと役割を最新テクノロジーラボと銘打っている。東洋から西洋的アプローチへの変化とそれに対する反感、ということか。
 もう一つの新規サポートプログラムは、日本人女性のためのサポートグループ。ハワイ大学ヒロ校のカウンセリングセンターを訪ねる日本人女学生が増えたということで始められた。そのチラシをみると「日本人女性のためのお茶会」になっている。「日本人女性のためのグループ・カウンセリング」などと銘打ったらたぶん怖気づいてほとんど来ないだろう。お茶を飲みお菓子をつまみながら世間話をし、互いのことをある程度知った上でないと本音が出てこない、という日本文化をよく理解したロシア人カウンセラーのアイディアである。カウンセリングは西洋が起源で今でも主流は認知行動療法など西洋的なアプローチだが、ここハワイは人口の過半数をアジア・太平洋地区の移民が占めるため、お茶会などアジア的アプローチを取り入れたサポートグループが有効と考えたのだ。これは西洋から東洋的アプローチへの変化といえる。
 新たに始まった2つのサポートプログラムが、太平洋の両岸からそれぞれ正反対の方向へ変化しているのを興味深く思った。

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