従業員支援プログラム

 最近仕事上でちょっとした悩みが続いた。たまたまハワイ大学機構が「従業員支援プログラム(EAP)」を無料で提供しているという案内メールを見たので、早速問い合わせ番号に電話すると「ではハワイ島東部担当のカウンセラーから連絡がいきますから待っててください」。ハワイ大学機構がホノルルにあるEAP提供会社と契約を結んでいて、離島にもそれぞれ支所があって照会サービスを行っている。そしてその日の午後にはヒロのカウンセラーからメールが来て、週末に会うことになった。それ以来3回、話を聞いてもらいカウンセリングを受けたが、とても役にたった。
 アメリカではEAPは60、70年代にすでに始まっており、現在では中規模以上の会社の多くで提供されている。会社が経費を払うため従業員には無料だ。ハワイ大学機構の従業員は3回まで、私が以前勤めたカリフォルニアの会社では5回までカウンセリングが無料だった。短期カウンセリングで最悪の事態(例:自殺・他殺)を回避するのが最低の目的だからだが、継続して中・長期のカウンセリングを受けたい人、また受ける必要のある人には通常の医療保険を使って被保険者負担額さえ払えば継続できるようになっている。
食べる前←と後↓のカンパチ。ハワイ島の西にあるカイルア・コナではカンパチの養殖場があっておいしいのが安く手に入る。これより大きいと刺身にするのにちょうどいいが、今は小ぶりが主で焼くと美味



 従業員の会社とEAP提供会社の間、カウンセラーと従業員の会社と間には何の利害関係もない。また「誰がカウンセリングをどこへ受けに来たか、話の内容は何だったかなど、一切の個人情報は極秘で他に漏れることはない」と契約書に明記されている。カウンセラーはみな厳しいトレーニングと試験を受けてパスした有資格者のみだから、守秘義務の重要性は熟知しており、話の内容がカウンセリング室の外へ漏れることはありえない。EAP会社は年に一度、このプログラムを利用した従業員の全体数と問題の大雑把なカテゴリーのみ(例・パワハラ)を年次報告書として雇用会社にデータとして提供するだけだ。全従業員の心身の健康と生産率向上を真に考えていれば、こういう情報は会社全体の生産率向上のためにも有益なはずである。
 EAPはアル中などに悩む社員の援助を中心に60,70年代に始まったが、現代の複雑に多様化した企業システムでは多くの従業員が過労、ストレス、リストラなどメンタルヘルスの危機にいつもさらされている。家族問題、健康問題、経済問題、子育て・家事との両立など他の問題とも複雑に絡んで人知れず悩む人は多い。日本でも欝などが社会問題化しているようだが、仕事そのものが忙しすぎてどうしていいかわからずに長期にわたって問題を悪化させてしまっているのではないだろうか。こういう人が増えれば会社全体の労働環境、ひいては会社の生産率にも悪影響を及ぼす、ということでEAPは従業員のメンタルヘルス予防に役立っている(と思う)。身体の病気を長くほうっておけば命取りになるのと同じで、精神的な悩みも早期発見・対処が大事。心も身体の一部で風邪をひくことだってあるさ、とみなが思えるような労働・社会環境を整えることが鍵だ。

EAP ―Employee Assistance Program(エンプロイー・アシスタンス・プログラム)