ユニバーサル・コース・デザイン(2)

 障害のあるなしに関わらず多様な学生すべてにわかりやすくするため、講師側が教え方の工夫しなければならない、というのがユニバーサル・コース・デザイン(UCD)の主眼だった。例えば、あるクラスに次のような学生がいたとする。1)いつも疲れているため集中力に欠けるシングルマザー、2)英語の理解力に限度のある外国人留学生、3)車椅子を利用する身体障害者、4)文字を読むのは不得手だが聞けば理解できる学習障害者。さてあなたがこのクラスを教える場合、この4人の学生に同じ情報が平等に伝わるようにするためにどういう工夫をしますか。
 1)と4)の学生のために、話すときは極力コンパクトに要点を捉えて話す。前もってプリント類を配ってそれを示しながら話すのがよい。できればパワーポイントなどビジュアルを使えば自然にプリントの類はできている。2)の学生や聴覚障害者にもそれは有効。聞いてわからなければ見て確認できるからだ。3)の学生のためには、フィールド・トリップなどで地域社会の見学などに出かける場合、その場所が車椅子にもアクセシブルかどうか前もって調査しておく。アクセス不可能な場合はその場所に掛け合う。そしてすべての学生に有効なのは、宿題のレポートを作文だけにするのではなく、テープレコーダー録音、あるいはビデオ録画など、提出方法にいくつかの選択肢を与える。もっともこのクラスが英作文のクラスであれば無理な話だが、それでも音声認識プログラムなどのオプションを与える。だから、UCDの成功の鍵は最新テクノロジーをいかに利用するかにかかっているといっても過言ではない。
今まで避寒のためにハワイにいた渡り鳥(プローバー)。そろそろアラスカへ帰る。大学の駐車場にて

 だから、UCDに優れたクラスというのは教授一人ではつくれない。大学のホームページ・デザイナー(ウェブ・マスター)などのITスタッフや障害学生サービスセンターのスタッフなどとの協同が必要だ。それを可能にするためにも大学の管理層がUCD推進を理解し、その先陣をつとめる必要がある。アメリカ連邦教育省などは、全米の大学学長の宛ててにUCD推進を義務付ける手紙を出したくらいだ。管理層がUCDを理解・推進しているかいないかで、教授・講師の工夫もぐっと楽になる。 
 そして何よりも大事なことは学生一人ひとりのセルフ・アドボカシー。黙って待っていてもUCDは自然には始まらない。自分の学習態度の長所と欠点を理解し、どういう方法ならば授業が理解できるのか、教授にどう教えてほしいのかを伝えることのできる力を一人ひとりが持たねばならない。同じ障害を持っていても得意な学習方法は千差万別。その学生の自己認識とアドボカシーへの努力を最も身近で支えるべきなのが障害学生サービスセンターである。