レジリエンスその2

 先週金曜日から今週の木曜日までファイナル・ウィーク。つまり毎日教室では期末試験が行われている。それで2011年秋学期は終了となる。コクア・ラボには最後のペーパーを書いたりする学生で込み合っている。みな必死か不安の形相で悲壮な感じがするが、私たちラボ職員の役目はひたすらこれまでの努力を認めて励ますことに尽きる。
 前回に続いて今週も障がい学生のレジリエント魂を見ている。一人はつい最近まで自殺願望の強かったレナ。お母さんとおぼしき人と一緒にやってきて「課題を全部仕上げたいからプリントアウトするのを手伝ってほしい」という。どうやら自殺したいほど大変だった状況は克服しつつあるようで顔色も明るい。彼女はもともと優秀な学生で、過去の成績はすべてA(優)。ちょっとでも小さな出来事で思うように行かない状況があったりするとパニックに陥る傾向がある。今回も欠席したクラスの課題6回分をすべてやり遂げようとしている。最初はあまりの量の膨大さにいささか神経質な感じでいたが、ひたすら「この世の終わりじゃないから」とか「これだけ確かにあるけど、落ち着いて一つずつ片付けようよ、いつかは終わるから」とか彼女を励ましなだめすかし現実的な問題解決方法を提案すると少し落ち着いてくる。完璧主義者で0%か100%のどちらかしかないという考え方が彼女を苦しめている。この日も「この課題11はもうビデオを見られないからできない!」とヒステリックになっていたが、「どれどれ、本当に見られないかどうかみてみようよ」と言ってウェブサイトやら課題リストの詳細やらを見ていくと、やっぱりまだリンクが掲載されていた。それで彼女も一安心。あれこれすったもんだの末、すべての課題をプリントアウトできた。「どうもありがとう」と言って帰っていくレナ。やれやれ。
我が家の裏庭から家を臨む。藪を刈ったら220年前のの溶岩が露出した

 そして午後になると、テリーがやって来た。彼は学習障がいのためか文字をタイプすることが全くできない。それで頻繁にラボにやってきては言語認識ソフトを使って文章を書くのではなく「しゃべる」。だから彼がラボにいると「ぶつぶつぶつ」と言う彼のつぶやく文章がバックグラウンドミュージックになる。しゃべった内容がうまく文字にならないときだけラボの職員の助けを借りている。最初の日はなかなか言いたいことがそのまま文字化しなくていらいらしていたようだが、3,4日もたった今ではしゃべる内容がかなりそのまま文字化していてずいぶんと言語認識ソフトにも慣れてきたようだ。ここのところ毎日来ては3,4時間も「ぶつぶつ」とやっている。彼はレナと反対で地道にこつこつとやるのが得意だ。おそらくテリーは普通の学生の10倍は時間をかけても課題エッセイを仕上げるだろう。
 障がい学生は普通の学生の10倍努力しても大学に行きたいかどうか、その気持ちがどれだけ強いかどうかで継続力が決まる。パティ(前回)、レナ(前々回)、テリーはその気持ちが人一倍強いレジリエントな学生たちだ。