障がいのある高校生の親御さん、教師の皆さんへ

 私は普段はコクア・ラボで働いていますが、そうでないときは、アウトリーチ、つまり地元の高校の特殊教育学級を訪ねて障がい学生サービスセンターの説明をしたり、大学生になるための心構えについてのワークショップをすることがあります。高校生までは未成年のため、教育に関することは親や教師など周りの大人に何から何まで任せっきりだった生徒でも、高校を卒業して成年になれば(州により異なるがアメリカではほぼ18歳が法的成人年齢)、いやおうなしに自分で選択しその結果に責任をとらなければなりません。そして大学生を相手にする私たち職員も、そういう大人を相手に、彼らの意思を最大限尊重して仕事をしています。
 ・・・というのは理想・建前で、現実はこれに向かって遠い道のりを歩み続ける努力をしている、といったほうが正しいです。18年も周りに依存してきた子どもがある日突然、意思と責任ある大人に変身するわけがありません。人間には昆虫のような見事な脱皮はできないのです。「あなたの障がいは何?」と聞いてみても、困った顔をして「アイ・ドント・ノー」という高校生が多くいます。「でも特殊教育を受けていることはわかっているでしょ、だって今そのクラスにいるんだから。どうしてこのクラスにいると思う?」と聞いても、両手のひらを上にあげて首をすくめるばかり。こういう生徒に対してはさらに細かく「難しいなーと感じるのはどういう学科や場面のとき?」というように具体的な質問をして、彼らの障がいや障壁に対する自覚や知識を徐々に発達させていかなければなりません。
キラウエア火口から臨む晴れた日のマウナロア。平べったいから低そうに見えるが、標高4169メートルで富士山より高い巨大などら焼き山

 私が高校の特殊学級訪問を始めたのは昨年の秋で、訪れたクラスは高校4年生(日本の高校3年)のみです。この一年を振り返ると、障がい生徒の自己認識を発達させるのは一年では無理だ、と感じています。こういうことはもっと早く、高校に入ってすぐ、いや中学校や小学校でも早ければ早いほどいいかもしれません。親や教師が何でもしてあげてしまっている生徒は一番「たち」が悪いです。その子の親や教師というのは周りから見れば手厚く教育や保護をしている「立派な」親や教師なのでしょうが、将来その子を大学へ入れたい、と思うのならば、早いうちから自立心(自己認識力)を育てなければ、高校を卒業しても自分の障がい名(あるいは状態)すら知らない、体だけは大人のかたちをした子どもが大学へ来ることになります。
 自分の障がいことが何もわからない学生を相手にサポートするのは、私たちサポートスタッフにとって最大の難関です。だからお願いです、障がいのある生徒さんの親御さんや教師の皆さん、高校を卒業するまでにせめて上の質問に答えられるようなお子さんに育てておいてください!そうすれば大学に入っても後が楽ですし(お互いに)、授業に対する合理的配慮も早いうちから手配できます。したがっていい成績が最初から取れて、スムーズに卒業することができます。
 来年度は8月22日から始まります。来年からは高校一年生のクラスから訪問しようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。