震災ボランティア体験記(2)ー歴史に学ぶ

津波で押し倒されて途中でちぎれた海岸の松並木。地元Y町歴史研究家のKさんによればこの松林は第二次世界大戦前まではこの写真を撮ったあたりまで続く奥行きのあるうっそうとした松の「森」だった。戦後、引き上げ兵などのため新しい住宅が必要となったが山間部の土地不足から徐々に海岸部へ新興住宅地が進出、この松の森もどんどん切り倒されて最後の一列が残るのみ。

松並木の近くにY町立N小学校があった。手前にはお墓があったが墓石がすべて倒れている。これも戦後の宅地・用地造成で松の森を削ったところだ。地震直後、小学生たちは2階へ避難していたがそれでも海水がさらに上昇してきたので屋根裏(3角形の部分)へ上がりそこへ机を重ね、さらにその上に上った。かろうじて海水はそこでとまったが、小学生は暗闇と寒さと恐怖の中、救助を翌朝まで待たなければならなかった。歴史に「もし」は禁句というが、もし奥深い松の森が今なお残っていてこの小学校が森の手前に建てられていたとしても、小学生たちはやはり屋根裏で恐怖の一晩を過ごさねばならなかっただろうか。